修行僧ぷってんの雑記

移動メインのトラベラー

北海道新幹線を改めて考えてみる その2

前回の続きです。

 

www.travelpudding.com

 

 

「4時間の壁」を突破出来ていない新幹線

そもそも4時間の壁とは、「一般的に新幹線の所要時間が4時間を切ると、利用シェアが飛行機から新幹線に傾く」というものです。

 

では、現在の北海道新幹線はというと、東京〜新函館北斗間を3時間58分で走り抜ける列車が最速となっています。が、これはあくまで「新函館北斗駅」までの話。

 

函館駅まで、トータル4時間半かかることを考えると、東京〜新函館北斗で4時間を切ったところで、利用客増加が見込める可能性はそれほど高くないでしょう。

 

※JR北海道の社長が、東京〜札幌は4時間半で結びたいと表明していますが、やっぱり4時間の壁は突破出来ていませんよね。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190322-00000001-hbcv-hok

 

その所要時間を踏まえて、「東京〜山口は、新幹線のシェアがそこそこ取れている!!」と言う人もいるでしょう。しかし、実際は次の問題が存在します。

 

全ての列車が同じ所要時間ではない

これは、別に東北・北海道新幹線に限ったことではありませんが、最速達列車というのはそんなに何本も存在するわけではありません。

 

というのも、先述したように、はやぶさの最速達列車は、東京〜新函館北斗を3時間58分で走り抜ける列車を指すのですが、これは下り2本(はやぶさ5.11号)、上り1本(はやぶさ38号)だけしか設定されていません。

 

それ以外は、軒並み20〜30分以上所要時間がかかっています。

これは、需要の少ない東北区間の各駅で乗客を拾うためのものです。東海道新幹線の「ひかり」と同じ仕組みだと考えていただいて結構です。

 

しかし、この仕組みでは速達化には全く寄与しません。もはや「4時間の壁ってなんぞや」状態になっているのです。この状況は、札幌に延伸したとしても変わらないでしょう。

f:id:travelpudding:20190317173932j:image

並行在来線への影響

整備新幹線が建設されると、必ずつきまとう並行在来線の問題。

 

第3セクター化される予定なのは、函館〜小樽間。この区間は約250kmと非常に長く、収益が見込める要素が限りなく少ないのは、紛れもない事実として受け止めなくてはいけないでしょう。「そもそも路線を維持できるのか?」という問題もついてまわります。

 

また、そこ以外にも「室蘭本線の長万部〜東室蘭間で、特急列車が運行されるのかどうか」という問題も残っています。

 

私は多分運行すると思いますが、今よりも運行本数は(札幌〜東室蘭・室蘭間も含めて)減らされるような気がします。

f:id:travelpudding:20190325061758j:image

有事では輸送力不足の東京〜北海道間

現在、東京〜新函館北斗を走行する、E5系とH5系の定員は、グリーン車とグランクラスを含めても、「たったの」723席しか存在しません。

 

これは、B777-300とB767-300を足し合わせた最大定員よりも少ないのです。

 

 

 

はっきり言って、「この程度」の輸送力では、有事の際に東京〜札幌間の乗客を飛行機から新幹線に振り返られる余裕なんてありません。

 

 

また、車両を増結して対応しようにも、盛岡より北では10両編成しか対応していないため、座席提供数はこれ以上増やせません。

(そもそも、JR東日本が開発している360km/h対応の新幹線は、定員がさらに減る見込みなんですけどね)

 

 

 

※新幹線が一部自由席ならともかく、現在でも「はやぶさ」は全車指定席。「立席特急券」と言って、全車満席でも乗れる手段はありますが、それでも利用出来る人数は限られています。

 

 

 

新千歳空港がダウンした時、函館まで特急で移動して、新幹線で北海道から帰る人がいるようですが、輸送力が足りていない現実が露呈しています。(振替輸送で満員御礼、立ち席多数になって「北海道新幹線は必要だ!」と喜んでいる場合じゃないんです)

f:id:travelpudding:20190326072201j:image

思った以上に需要が少ない、関東・東北〜北海道間

次に需要を予測してみましょう。

 

※人口減少、需要増大などは、不確定要素は多いので、それらは一旦排除して考察し、非常に簡潔にしています。

※利用客数は全て「往復」で計算します。

 

 

 

北海道新幹線が札幌まで延伸開業した場合、優位な区間は、だいたい仙台までと言えそうです。

 

 

さて、北海道・東北地方(函館、青森、花巻、仙台空港)〜北海道の、飛行機での年間の移動人数はというと、約111万人です。「北海道新幹線には区間需要ガー」と言う人もいるのですが、この区間の利用者って、意外と多くないんですよね。

↓こちらに詳しく載ってあります。

https://www.city.chitose.lg.jp/fs/1/4/4/9/8/_/__29______________.pdf

 

 

これを1日あたりの平均人数で割ると、だいたい3040人。

 

なんと、飛行機からシェアを100%奪い取ったとしても、利用者は1日たったの3040人しかいないんですよ。

f:id:travelpudding:20190326075647j:image

さらに、羽田〜新千歳の飛行機利用客が年間約900万人なので、ここから約10%シェアを奪えたとして、年間90万人。

 

 

これを再び1日あたりに換算すると、約2460人です。シェアを20%奪ったとしても、関東〜札幌間の利用者は5000人程度なんです。

 

 

 

仮に、東北〜札幌をシェア80%、関東〜札幌をシェア20%、飛行機から取ったとして、本州へと直通する旅客だけで考えると、1日の利用客数は7300人。

 

 

 

 

2019年現在、北海道新幹線を利用している乗客が、札幌延伸時にも変わらず利用し、新函館北斗で下車する(約4700人)と仮定した場合、札幌延伸後に青函トンネルを通過する乗客は、約12000人となります。

 

 

東京〜札幌間で新幹線を14往復運転(6時から19時まで毎時1本運転)だと仮定すると、新青森〜新函館北斗間の平均乗車率は約59%になります。現在の乗車率20%台と比べれば、状況は劇的に改善します。

 

 

※おそらく東北発着の3往復(仙台、盛岡、新青森発着)は設定されるでしょうから、平均乗車率は48%まで下がりますし、この予測はかなりザックリしたものなので、もっと増減する可能性はあります。

 

 

 

実はこっちが本命?函館〜札幌間

また、函館〜札幌間といった、道内での需要も拡大することが見込まれます。

 

とは言うものの、函館駅からだと新函館北斗で乗り継ぎが1回ありますし、「国土交通省の予測通り需要が3倍弱も拡大」するということはおそらくないでしょう。

 

ここでは、新函館北斗~札幌間だけの利用者が2倍強になったとし、これを6000人程度と仮定しましょう。

 

 

 

あくまで仮定の話なんですが、対東北の需要をはるかに凌駕してしまいます。ちなみにこれは、国土交通省も認めるところです。

 

※この道内区間を含めた利用者数は、1日あたり13300人(関東・東北〜札幌7300人+函館〜札幌6000人)と仮定し、先ほどの運転本数(17往復)を当てはめると、平均乗車率は約54%になります。

 

ただ、現在の特急「スーパー北斗」の代替となる、札幌〜新函館北斗間の区間列車はおそらく運行するでしょうから、やはり平均乗車率は変動します。

f:id:travelpudding:20190326071729j:image

さて、ここでよく考えて欲しいのです。

 

北海道新幹線は、冬場に飛行機が運休した時の「バイパス」になるはずでした。

 

しかし、新青森〜札幌で平均的に50%から60%利用客がいるという事は、その50〜60%の座席は使用出来ない事を意味しますよね。

 

 

 

この状態で、飛行機からの振替を受けるとなると、「片道1時間あたり約300人〜350人程度」しか輸送出来ない計算になります。

 

仮に、「新千歳空港が丸1日ダウンし、新幹線は通常運行」と仮定し、新幹線を片道14本運行したとしましょう。

 

 

この状況でも、追加で運べる余裕があるのは「たった」4900人です。ちなみに羽田〜新千歳の飛行機の利用客は、1日平均にならすと片道あたり12000人ほどです。

 

 

と、ここまで新幹線に有利な条件を与えても、明らかに輸送力が足りていないのが露呈しています。

 

はっきり言えば、「飛行機利用客が全員新幹線に流れた場合、少なくとも半分以上の人間は帰宅手段がなくなる」のです。

 

長くなったので分割します。

 

www.travelpudding.com