修行僧ぷってんの雑記

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静岡に残る不可解なひかりのダイヤ

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またまたリニア関連の話。

 

「リニアが開通すれば、のぞみ利用客がリニアにシフトし、静岡県もひかり・こだまの本数が増えて便利になる」という趣旨のパネルを、JR東海の主要駅に設置しています。

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静岡県各地は、直接リニア開通の恩恵に預かれないため、わざわざあんなパネルを設置しており、JR東海もリニア開通効果のアピールに余念がないです。

 

しかし、その主張には正直懐疑的です。理由は今の「ひかり」のダイヤにあります。

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ひかり号は、停車パターンが大きく2つに分かれていますが、どちらも共通して、東京、品川、新横浜、名古屋、京都、新大阪に停車します。つまり、のぞみの停車駅には、ひかりは全て止まります。

 

 

ひかりの停車駅パターン1つ目は、のぞみの停車駅に、小田原か豊橋を加え(=言い換えれば、静岡県内は全て通過)、さらに岐阜羽島と米原に停車するタイプ。

 

ひかりの停車駅パターン2つ目は、のぞみの停車駅に、静岡と浜松、さらに時間帯によって三島か熱海を加え、岐阜羽島と米原は通過するタイプ。

いずれも基本は1時間に1本運転されます。

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停車駅パターン1つ目は、新大阪を発着駅とするため、いわゆる「新大阪ひかり」。2つ目は岡山を発着駅とするため、いわゆる「岡山ひかり」と呼ばれています。今回取り上げるのは「岡山ひかり」の方。

 

 

「岡山ひかり」は、時間帯によって三島か熱海を停車駅に加えると説明しました。問題は、この停車本数が異様に少ないこと。

 

 

「岡山ひかり」は、三島に1日6往復、熱海に至っては1日3往復しか停まりません。(参考までに、浜松と静岡は3倍近く、およそ1時間に1本停まります)

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では、熱海にも三島にも停まらない「岡山ひかり」は一体どうしているのか?というと、その答えは、「熱海〜三島駅を超低速で通過し、静岡or新横浜到着時点で帳尻を合わせている」のです。

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※静岡到着時間は02分着で全く一緒

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※新横浜到着時間は24分着で全く一緒

 

 

 

時間帯によって駅を通過する事そのものは、別に「岡山ひかり」に限ったものではなく、関東で例を挙げるなら、小田急線経堂駅は、平日のラッシュにあたる時間帯で、急行が通過しますし、もっと大規模なもので言えば、JR中央線の高円寺、阿佐ヶ谷、西荻窪は、土休日に快速列車が1本も止まりません。

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これらは、急行に乗客を集めすぎないようにする混雑緩和(これを「遠近分離」と言います)と、それに伴うダイヤ乱れの防止、また駅を通過して速達性を向上させる事を目的としています。

 

一方「岡山ひかり」はというと、三島に停車する列車は、東京•岡山方面共に6本ずつで合計12本。(9時台から19時台の間で2時間に1本停車)。熱海に停車する列車は、岡山方面が10時、16時、18時、東京方面が11時、13時、19時の3本ずつで合計6本です。どうも歪なダイヤですよね。

 

 

さて、現状を述べたところで、以下、想定される反論とそれに対する意見を述べていきます。

 

 

 

•速達性の向上に役立っている

→先述したように、停車しようが通過しようが、運転時刻は1分も変わらないため、今のダイヤでは、速達性の向上には何ら寄与していません。

 

•ダイヤ乱れの防止に役立っている

→朝は9時台まで通過するため、一見正しいようにも思えますが、夕方のラッシュ時にも関わらず、熱海か三島に止めているので、ダイヤ乱れの防止にも当てはまりません。

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•三島or熱海にひかりが停まると、後ろのこだまが遅れるので、今のダイヤになっている

→確かに「岡山ひかり」は、岡山方面の全列車が、小田原でこだまを追い抜き、抜かれたこだまは、三島までひかりの3分後ろを追いかけますが、本当にそれが問題であれば、夕方はひかりを全便通過にすべきですが、今はそうなっていません。

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夕方以降は、通勤用に三島までのこだまが増便されますので、「熱海か三島へは、夕方に三島行きのこだまを増便しているからそっちを使え」というスタンスの方がまだ分かります(小田急線経堂駅の例と一緒)。

 

しかし現在は、昼間に通過し夕方は停車するという、歪なダイヤとなっており、指摘の内容は正しくありません。

 

 

•並行するJR東日本に対して忖度している

→熱海の停車列車を見れば分かる通り、10時台に岡山方面行き、11時と13時には東京方面行きのひかりが止まります。

 

 

この時間は、並走するJR東日本の在来線特急「踊り子」が運行されています。JR東海が本気で忖度するなら、少なくとも熱海には停車しないでしょう。というか、民間企業同士が競争せずに忖度するのはおかしな話ですけどね。

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以上の事を踏まえて考えると、「三島or熱海に停まるひかりは、今ぐらいの停車本数で問題ない」という思想のもと、ダイヤが設定されているといって差し支えないと思います。

 

というのも、鉄道は停車駅が増えるたびにお金がかかります。1度スピードを0km/hに落とした後、再び発車する時に余計な電力を消費するからです。

 

リニアが開通した事で、三島と熱海の利用客が劇的に増えるかと言えば、到底そうは思えないですし、「1本も列車を増やさなくていいのに停めていない」ダイヤをそのままにしている時点で、リニア開業効果も何もないのですが……