修行僧ぷってんの雑記

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2027年のリニア開業で静岡は便利になる?

大井川の水量を巡って、今も対立が続くJR東海と静岡県。

 

そんな中、ネットでは「2027年にリニアが開業して、東海道新幹線のひかりとこだまが増便されるだろうから、静岡県は我慢しろ」という意見が散見されます。

 

おそらく、そう主張する人は、静岡県の現況と将来をよく分かっていないのではないでしょうか。順を追って説明したいと思います。




 

f:id:travelpudding:20200108234334j:image現在の東海道新幹線では、静岡県にとって不便か?

不便です。

1時間に2本のこだましか停車しない掛川と新富士はともかく、ひかりが2時間に1本しか止まらない三島、それ以下の熱海も酷いです。

 

※というか、熱海or三島に停車しないひかりと、どちらかに停車するひかりの所要時間が、トータルでは全く変わってないのは、正直いかがなものだろうか…

 

 

ただ、静岡でも浜松でも利便性は大きく変わりません。

 

「浜松も静岡も、ひかりが1時間に1本、こだまが1時間に2本、合計3本止まっているじゃないか!」と思うことなかれ。

 

 

名古屋→浜松、浜松→名古屋、東京→静岡、静岡→東京のどのパターンを用いても、1時間に2本あるこだまのうちの1本は、絶対ひかりに抜かれます(抜かれる場所は三河安城と小田原です)

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つまり、1時間のうちに使える列車(これを有効列車と言います)は、ひかり1本と、こだま1本の合計2本しかありません。

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この本数、東京から1000km以上離れた、山口とか熊本とかと大差ないんですよ。

 

静岡レベルなら現在の停車本数でも妥当?

妥当かと言われるとどうでしょうか。

 

東海道新幹線沿線の都市が、日本有数の人口を誇るため、影に隠れがちですが、実は人口ランキングでは日本10位だったりします。

また、静岡も浜松も政令指定都市に指定されています。

 

 

静岡と浜松は合併して、人口と面積ともに非常に大きな都市になりましたが、合併前から45万人前後の人口はありました。

 

その割に、新幹線の冷遇は続いており、

対東京で考えると、

宇都宮(有効列車3本/時)はおろか、

郡山(有効列車3本/時)にすら負け、

福島でようやく互角(有効列車2本/時)

といった所です。

 

※静岡⇄浜松はひかり1本、こだま2本が全て有効列車となるため、有効列車3本/時と捉える事は可能です。

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ただし、夕方ラッシュ時の増便はほぼなく、目立った増便も、朝の浜松→静岡・東京方面しかなされていないため、総本数では先述した3都市より少ないです。ほとんどの時間で有効列車3本という状況は、正直いかがなものでしょうか。

 

2027年の名古屋開業時に便利になるか?

結論から申し上げますと、ほとんど変わりません。そう言える理由は、JR東海が公言している事からもわかります。

 

JR東海は、静岡県の主要駅に、こんなモニュメントを設置しているのですが、

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そこには「中央新幹線全通後」の文字。

 

つまり、静岡の新幹線が今より便利で使いやすくなるまでには、最低でもあと18年かかる事を示唆しています(←ここ重要です)

 

2027年の名古屋開業時には何とかならないのか?

これに関しては、開業の効果が限定的すぎるので、大きく変わる事はないと予想します。

 

というのも、

・品川〜名古屋という、1番時短効果のある区間ですら、新幹線→リニアの短縮時間が50分しかないこと

・名古屋が目的地でなければ、再び東海道新幹線に乗り換える「手間」が発生すること(大阪まで全線開通すれば、この問題はかなり無視出来る)

・品川と同等の利用客がいる新横浜と、名古屋〜大阪、果ては山陽新幹線方面の速達性を失くすわけにはいかないこと

 

 

が挙げられます。

 

となると、やはり2027年時点、あるいはリニア大阪開業までは「のぞみ主体ダイヤ」のままではないでしょうか。

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もっと根本的な問題

そもそも、東海道新幹線の重大な欠陥として、「主要駅以外、ほとんど2面4線の駅が存在しないこと」が挙げられます。

 

2面4線の駅というのは、

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こんな感じの駅を指します。

 

東海道新幹線でこうした構造を有している駅は、品川、新横浜、名古屋、岐阜羽島、京都しかなく、下り線だけという場合を含めても、他には豊橋と米原しかありません。

 

この構造の最大のメリットは、速い列車と遅い列車の乗り換えを同じホームで出来ること。

 

 

 

現在、のぞみが全列車通過する静岡県の各駅では、2面4線の駅は1つも存在せず、理想的な乗り継ぎが全く出来ないのです。

 

そのため、静岡県各駅において、利便性を向上させるためには、「ホームを増やす」か「本数を増やす」しかありません。

 

先述しましたが、これが達成されるのは、「リニアが大阪まで開通したタイミング」で、解決方法は「本数を増やす」になるでしょう。

 

結局のところ

静岡県にとっては、リニア開業が何年遅れようが全く関係ないため、そう簡単には引き下がらないでしょう。

 

静岡県側が「大井川問題が解決しないなら、静岡県を通らなくてもいい」と主張しているのに、東名間を最短距離を結びたいJR東海は、これを拒否しています。

 

早くリニア開業してもらいたい人達にとっては、静岡県はこの上なく邪魔な存在のように感じるでしょうが、通過するからには当然合意が必要です。JR東海は真摯な対応を求められています。

 

 

 

と、散々語りましたが、リニアが大阪まで開業しないと、ほとんど利便性が変わらない東海道新幹線と、生活に根付いている水のどちらが大事か、考えなくても分かる事だと思いますが……………