2027年のリニア開業で静岡は便利になる?
大井川の水量を巡って、今も対立が続くJR東海と静岡県。
そんな中、ネットでは「2027年にリニアが開業して、東海道新幹線のひかりとこだまが増便されるだろうから、静岡県は我慢しろ」という意見が散見されます。
おそらく、そう主張する人は、静岡県の現況と将来をよく分かっていないのではないでしょうか。順を追って説明したいと思います。
- 現在の東海道新幹線では、静岡県にとって不便か?
- 静岡レベルなら現在の停車本数でも妥当?
- 2027年の名古屋開業時に便利になるか?
- 2027年の名古屋開業時には何とかならないのか?
- もっと根本的な問題
- 結局のところ
現在の東海道新幹線では、静岡県にとって不便か?
不便です。
1時間に2本のこだましか停車しない掛川と新富士はともかく、ひかりが2時間に1本しか止まらない三島、それ以下の熱海も酷いです。
※というか、熱海or三島に停車しないひかりと、どちらかに停車するひかりの所要時間が、トータルでは全く変わってないのは、正直いかがなものだろうか…
ただ、静岡でも浜松でも利便性は大きく変わりません。
「浜松も静岡も、ひかりが1時間に1本、こだまが1時間に2本、合計3本止まっているじゃないか!」と思うことなかれ。
名古屋→浜松、浜松→名古屋、東京→静岡、静岡→東京のどのパターンを用いても、1時間に2本あるこだまのうちの1本は、絶対ひかりに抜かれます(抜かれる場所は三河安城と小田原です)
つまり、1時間のうちに使える列車(これを有効列車と言います)は、ひかり1本と、こだま1本の合計2本しかありません。
この本数、東京から1000km以上離れた、山口とか熊本とかと大差ないんですよ。
静岡レベルなら現在の停車本数でも妥当?
妥当かと言われるとどうでしょうか。
東海道新幹線沿線の都市が、日本有数の人口を誇るため、影に隠れがちですが、実は人口ランキングでは日本10位だったりします。
また、静岡も浜松も政令指定都市に指定されています。
静岡と浜松は合併して、人口と面積ともに非常に大きな都市になりましたが、合併前から45万人前後の人口はありました。
その割に、新幹線の冷遇は続いており、
対東京で考えると、
宇都宮(有効列車3本/時)はおろか、
郡山(有効列車3本/時)にすら負け、
福島でようやく互角(有効列車2本/時)
といった所です。
※静岡⇄浜松はひかり1本、こだま2本が全て有効列車となるため、有効列車3本/時と捉える事は可能です。
ただし、夕方ラッシュ時の増便はほぼなく、目立った増便も、朝の浜松→静岡・東京方面しかなされていないため、総本数では先述した3都市より少ないです。ほとんどの時間で有効列車3本という状況は、正直いかがなものでしょうか。
2027年の名古屋開業時に便利になるか?
結論から申し上げますと、ほとんど変わりません。そう言える理由は、JR東海が公言している事からもわかります。
JR東海は、静岡県の主要駅に、こんなモニュメントを設置しているのですが、
そこには「中央新幹線全通後」の文字。
つまり、静岡の新幹線が今より便利で使いやすくなるまでには、最低でもあと18年かかる事を示唆しています(←ここ重要です)
2027年の名古屋開業時には何とかならないのか?
これに関しては、開業の効果が限定的すぎるので、大きく変わる事はないと予想します。
というのも、
・品川〜名古屋という、1番時短効果のある区間ですら、新幹線→リニアの短縮時間が50分しかないこと
・名古屋が目的地でなければ、再び東海道新幹線に乗り換える「手間」が発生すること(大阪まで全線開通すれば、この問題はかなり無視出来る)
・品川と同等の利用客がいる新横浜と、名古屋〜大阪、果ては山陽新幹線方面の速達性を失くすわけにはいかないこと
が挙げられます。
となると、やはり2027年時点、あるいはリニア大阪開業までは「のぞみ主体ダイヤ」のままではないでしょうか。
もっと根本的な問題
そもそも、東海道新幹線の重大な欠陥として、「主要駅以外、ほとんど2面4線の駅が存在しないこと」が挙げられます。
2面4線の駅というのは、
こんな感じの駅を指します。
東海道新幹線でこうした構造を有している駅は、品川、新横浜、名古屋、岐阜羽島、京都しかなく、下り線だけという場合を含めても、他には豊橋と米原しかありません。
この構造の最大のメリットは、速い列車と遅い列車の乗り換えを同じホームで出来ること。
現在、のぞみが全列車通過する静岡県の各駅では、2面4線の駅は1つも存在せず、理想的な乗り継ぎが全く出来ないのです。
そのため、静岡県各駅において、利便性を向上させるためには、「ホームを増やす」か「本数を増やす」しかありません。
先述しましたが、これが達成されるのは、「リニアが大阪まで開通したタイミング」で、解決方法は「本数を増やす」になるでしょう。
結局のところ
静岡県にとっては、リニア開業が何年遅れようが全く関係ないため、そう簡単には引き下がらないでしょう。
静岡県側が「大井川問題が解決しないなら、静岡県を通らなくてもいい」と主張しているのに、東名間を最短距離を結びたいJR東海は、これを拒否しています。
早くリニア開業してもらいたい人達にとっては、静岡県はこの上なく邪魔な存在のように感じるでしょうが、通過するからには当然合意が必要です。JR東海は真摯な対応を求められています。
と、散々語りましたが、リニアが大阪まで開業しないと、ほとんど利便性が変わらない東海道新幹線と、生活に根付いている水のどちらが大事か、考えなくても分かる事だと思いますが……………