東急池上線1日フリーきっぷで池上線に乗車してみた
2017年10月9日、この日は鉄道会社では首都圏発の取り組みが行われた、歴史的な1日として刻まれることになりました。その鉄道会社は、「東急電鉄」です。
しかし、その主役は東横線でも田園都市線でもありませんでした。
その名は「東急池上線」。
そもそも東急池上線とは
あなたは「東急池上線」をご存知でしょうか?
東急池上線は、五反田駅と蒲田駅を結ぶ全長10.5kmの路線で、すべて普通列車で運行されます。
東急といえば、東横線や田園都市線などを思い浮かべる人も多いでしょう。関東での認知度も高いです。いい意味でも悪い意味でも。
一方で、池上線は全線東京都内を走るにもかかわらず、3両編成でしかもワンマン運転です(多摩川線も同様)
池上線は東横線や田園都市線に比べて認知度は低く、また池上線の沿線住民の高齢化も進んでいるとのこと。
これに危機感を持った東急は、認知度向上とともに沿線地域の活性化を狙い、池上線開業90周年の節目として、10月9日に「東急池上線1日フリーきっぷ」を配布することにしたらしいのです。
私はすでに、2年前に東急池上線の全線乗車&全駅制覇を済ませています。このイベントに乗っかった理由はそちらではなく、「フリーきっぷ無料配布が首都圏の鉄道で初」という取り組みが、池上線にどれほどの効果をもたらすのか気になったからです。
早速五反田へ
午前11時すぎ、JR五反田駅に到着。
渋谷から3駅、品川からも2駅と非常に便利な立地ですが、思っていたよりも人の数は多くありません。
この時点では舐めきっていました。完全に。
まずは改札を出て左へ。
都営浅草線との運命の分かれ道を右へ。
階段を上り、東急の五反田駅が見えてきます。
東急の改札口は4階にあるみたいです。
エスカレーターで4階へ。
4階に着くとすぐに改札が見えてくるのですが、駅員さんが大量にいました。
何をしているのかと思いきや、フリーきっぷを配布していました。
いくら無料とはいえ、1人1枚限定で配布するみたいです。
私も1枚受け取ります。
山手線から直接乗り換える人は、1列になって並び、1枚1枚受け取って改札を通過していました。こちらを選択して良かったです。
往路 五反田→蒲田
池上線の五反田駅のホームは狭く、乗り降りに時間がかかり、ダイヤが乱れていた模様です。
すでに時刻表が若干機能しておらず、蒲田行きの電車はかなり遅れてやってきました。
この遅れの影響で、狭いホームに人がたまり始めます。
私は2両目に乗車。すでに立ち客が多いです。
10分遅れで五反田を出発。
山手通りをまたいで大崎広小路に到着。
大崎広小路と五反田の駅間は340mしかなく、下車する人より乗車する人の方が圧倒的に多かったです。
戸越銀座は、ネームバリューがあるからか、立ち客の半分以上が消えましたが、乗車する人はそれ以上に増えました。
※どうやら戸越銀座でコロッケ無料配布などのイベントが行われていたようです
荏原中延も乗車の方が多く、この時点で限界が近づきます。
次の旗の台は、大井町線との乗り換え駅。
下車する人が多くいましたので、私はここで着席出来ました。しかし、ここも乗車する人の方が多いです。戸越銀座ほどの下車がなかったのに、乗車は同じぐらいありました。
するとどうなるか。
まさかの積み残しが発生することになります。
2年前に私が池上線に乗車した時には、間違いなく起こり得なかった様子です。
続く長原、洗足池でも積み残しが発生しています。
石川台は下車する人が少なめですが、乗車する人も少なかったため、結果的には積み残しの数も減少します。
雪が谷大塚は相対式ホームなのでホームの様子はわからなかったのですが、乗客の様子を見る限りあまり変動はなさそう。
御嶽山は明らかに乗車客の方が多く、積み残しはまだ無くなりません。
御嶽山駅付近は、東海道新幹線の真上を走るからか、そこで撮影してる人もちらほら。
久が原、千鳥町では下車する人の方が多かったからか、千鳥町出発時点で積み残しはほぼなくなりました。
池上で大量下車。立ち客は半分以上いなくなりました。これまでに比べるとかなり車内に余裕があります。
といっても、乗車率は130%〜140%になっています。
すでに車内に余裕があるので、蓮沼では積み残しになるほどではありませんでした。
五反田から25分、ようやく終点の蒲田に到着しました。
蒲田では、フリーきっぷ保持者はきっぷを通さずに出場するようにアナウンスされていました。
こういう対処をしたのは、蒲田駅の改札の大部分がパスモやスイカなどの「ICカード専用改札」だったためです。
このように、きっぷ保持者を誘導するような表示がなされているのも、時代が変わったと言うべきでしょうか。
とりあえず1本見送って、次の五反田行きに乗り込みます。
※この時点でダイヤは無茶苦茶なので、時刻表があてになりません。
乗車率は100%を超えていましたが、不快なほどではありません。
復路 蒲田→五反田
今度は、大きな動きのあった駅で下車し、駅構内の様子を観察したいと思います。
蓮沼は下車する人の方が多かったため、もともと余裕のあった車内がさらに空き始めます。
その次の池上でいったん降りてみました。
池上駅は、池上本門寺への最寄り駅で、多くの参拝客が乗降しているのでしょう。それゆえ、電車が来ない時間はどうしても乗客がたまりがちになってしまいます。
次の五反田行きに乗車。車内はまあまあ混んでいますが、積み残しが出るほどではありません。
積み残しするかしないかが問題になっている時点で、だいぶ感覚がイカれてきてますね。
御嶽山は乗車する人と下車する人がトントン。
雪が谷大塚では若干増えたものの、やはり不快なほどではありません。
石川台、洗足池でもあまり変化なし。
いったん長原で降りてみました。
さきほど蒲田行きに乗車したときは、この駅から積み残しが本格化しました。
ホームをしばらく観察しても、積み残しや入場規制が起こりそうな雰囲気はありません。
どうやら、遅延した電車に乗客が集中した結果、1つ手前の旗の台でギリギリだった車内が限界に達し、長原の乗車する人を迎えられなかったのではないか、と推察出来ます。
メディアやまとめサイトでは「乗車率200%!」と報道していましたが、池上線のすべての列車が乗車率200%ではなく、遅延した列車に人が集まり、その列車が乗車率200%に達したと考えるのが自然でしょう。
これは帰省ラッシュの新幹線でも同じことが言えますよね。それと同じです。
次の五反田行きは安全確認の影響で遅れたせいか、かなりの乗車率でした。
隣の旗の台でいったん下車。
対向の蒲田行きはやはり満員でした。
続行の五反田行きはすぐにやってきたので、そこまで混んでいませんでした。予想通りです。
往路の蒲田行きで大量下車があった戸越銀座で1度降りてみます。多分ここの混雑が1番ひどいです。
twitterにも載せましたが、駅前の踏切を横断する人の数が多すぎて、凄まじいことになっています。
あまりにも人が多すぎて、踏切が「カンカン」と鳴り始めても、すぐに向こう側へ行けるわけではありません。人々は、遮断機を上に持ち上げながら渡るハメになります。
これは非常に危険で、なおかつ定時運行を妨げる要因になってしまいます。沿線にとってはホクホク状態かもしれませんが…
戸越銀座から五反田行きに乗り込んで2駅、終点の五反田に戻ってきました。JRへの乗り換え改札は相変わらず混雑しており、通過に2分ぐらい時間を要しました。
なぜこうなったのか?
それは、フリーきっぷ保有者が山手線に乗り換えるには、先にフリーきっぷを通し、間髪入れずにICカードをタッチしなければならず、これに不慣れな乗客が弾かれるからです。
従来の乗り換えだと、東急とJRのきっぷを2枚通すことになりますが、それだと券売機できっぷを買い求める乗客で詰まることになります。
目的地までの料金がチャージされていれば、ワンタッチで済むICカードの便利さを改めて実感する結果となりました。
まとめと考察
さて今回のイベント、結果としてどうだったのか、まとめてみたいと思います。
まず、東急としては「大成功」でしょう。
確実に池上線の認知度は上がったはずです。
沿線の商店街などはどうでしょうか?
戸越銀座の様子を見れば、これも「大成功」だったと言えるでしょう。途中駅の乗降客数を見る限り、例外もありそうですが…
乗客は「無料」で観光出来たのだから、文句はないはずです。混雑を嫌うなら、こんな日に池上線には近づきません。
一方で、このイベントの被害者も出ています。
それは、池上線の定期利用者と池上線の駅員&乗務員です。
これらの人達は、「10月9日にイベントをやろうがやらまいが、どうせ池上線を利用する」という共通点があります。
※東急の社内調整で、池上線へ応援に出かけた駅員さんも多くいらっしゃるでしょうが、今回は考慮しないものとします。
首都圏初の取り組みとして、10月9日より前から注目されていた今回のイベント、蓋を開けたら想像以上の盛況だったのは、誰の目にも明らかです。
それによって、地元利用者などが割りを食う形となってしまったのは残念ですが、初めての取り組みでは、往々にしてこういう混乱が起きるものです。東急を責めるのはお門違いではないでしょうか。
また、「東急はもともとフリーきっぷが安いから、わざわざこんな日に出かけなくてもいい」という意見もtwitterでは見受けられました。
確かに、東急のフリーきっぷは安いです。
東急を全線利用出来る「東急ワンデーオープンチケット」は、通年680円で販売しています。
私もこれを購入して、東急全線を巡りました。
しかし、この「ワンデーオープンチケット」を元々知っている人が、果たしてどれだけいるでしょうか?
そして、このチケットを知っていたとして、池上線に乗るために購入しようとする人がどれだけいたでしょうか?
東急は、池上線専用のフリーきっぷを出す事も出来たでしょうが、五反田〜蒲田しか乗り降り出来ないのは、使い勝手がいいとは言いがたいです。
だからこそ、東急は「無料」という大きなインパクトを残すしかなかったのではないでしょうか。
東急としては、無料で池上線に乗られるよりも、「東急ワンデーオープンチケット」を使ってもらう方がよっぽど好ましいでしょう。
しかし、認知度が上がらなければ、そもそも東急ワンデーオープンチケットを「池上線で」使うという選択肢は出てきません。
今回のイベントは、「大都市圏から多く人を呼び込めた」という事も大きかったのではないでしょうか。
普段はローカル線のような様相を見せる池上線ですが、東京23区内を走る路線。
五反田も蒲田も、そんなにアクセスが不便というわけではないので、「無料なら乗車しよう」と思い立って行動出来る人が多かったのではないかと思います。
※例えば、房総半島や群馬、栃木、箱根などの関東外縁で、池上線と同じイベントを行うよりも、東京都心でやった方が集客が見込めるというのもあります。
なら地方でこのようなイベントを行ったら失敗するか?というと、別にそうではなく、盛り上がる可能性は十分あると思います。
日本は東京への一極集中が進んでいるとはいえ、大都市が比較的分散して存在しています。
その大都市から、どれだけ人を集められるかが重要なんじゃないかな、って思います。
※ただし、「池上線」に続けと言わんばかりに、地方のローカル線が1日無料フリーきっぷ施策を行なっても、鉄道好きしか集まらず、思ったより集客が見込めないという可能性を秘めていますが…
最後になりましたが、混雑に辟易として池上線に近寄らなかった人は、東急ワンデーオープンチケットのご利用をオススメします。
池上線だけではなく、世田谷線や多摩川線なんかも面白いので、ぜひどうぞ。