コロナ収束後に高速道路無料化??
コロナが収束した後、消費喚起を目的として、高速道路を無料化する案が政府から出されました。
私としては、実行するにしても平日限定にすればいい(事実上、運送会社に対する救済)と思っていましたが、仮想案なのでまだ何とも言えません。
が、消費喚起が目的なら、土日祝日がメインになってくるのでしょう。
これを受けて、公共交通機関大好きマンから猛反発が出ていますが、まあズレた意見が多いですね。
そもそも、普段から「採算」ありきで物事を論じている人間が、鉄道(主に中長距離の特急列車)や路線バスが不利になると知ると、「公共交通を殺す気か!」と、猛烈にクルマ、高速道路叩きをしているのも滑稽な話なんですけどね。
(そういう発言を無意識に信じ込むのもどうかと思いますが、THE BLUE HEARTSも「声のデカいやつが笑う」とはよく言ったものです)
また、前回の「1000円高速の悪夢」が頭にある人も多いようですが、色々と状況は変わっています。それを無視して、同列に比較する事は出来ません。
前回の1000円高速と違う点を、まず道路事情の面からざっくり言うなら、
・常磐道が全線開通した(そもそも当時はいわき以北が実質使用不可だった)
・新東名が出来た
・新名神(四日市〜亀山間、高槻〜神戸間)が出来た
・圏央道が大方完成した
・東京外環道(千葉区間)が開通した
・阪和道が延伸した
・東九州道(北九州〜宮崎)が繋がった
パッと思いつくレベルでもこれだけ違います。
論者が言う、1000円高速の時に、渋滞70kmが発生したというのは、おそらく2011年の東北道での渋滞のことを指しているのでしょうが、これは原発事故が原因で、常磐道を通行する車両が減少したからなんですけどね。
また、東名上りの大和トンネルでも、似たような状況になった事もありますが、圏央道、新東名開通によって、渋滞は若干ですが緩和傾向にあります(むしろ御殿場〜大井松田間が事故多発地帯なので、そこを先頭に詰まる傾向にある)
とまあ、こんな感じで状況が違うので、同列に比較する事は出来ませんよね。
「前回の1000円高速の時はこうだった!!」と言われても、「あの時と現在では、まず道路事情が違いますよね」という感想しか抱けません。
さらに、「コロナのリスクは公共交通機関で高まると言われている」「政府のお財布は無限ではなく、ある程度のコストパフォーマンスは求められる」という点も、全く理解していません。
自動車も密閉された空間にいるため、他の交通モードと似てはいますが、同じ空間を共有するのは多くても数人程度。これが公共交通機関となると、数十人、数百人の世界になります。
コロナが収束してから、高速道路無料化は実施される予定とはいえ、いたずらにリスクを増やす事を、政府が推進するはずもありません(そこのところを理解していますか、ANAさんJALさん)
また、普段から採算論でしか判別しない人間が、政府の財政を理解しないのもギャグでしかありません。政府のお財布は別に無限に湧いてくるわけではなく、投下した資本に対し、ある程度のリターンは求められます。
1人1人に割引しないと効果が得られない公共交通機関に対し、何人乗っていようがクルマ1台に割引すれば(※30%は今でも土日と深夜で割引している)効果が得られる高速道路とでは、資本投下に対するパフォーマンスの質が全く異なってきます。
※もっと言うなら、積極的にガソリンを使わせることが大事です。
というか、「ローカル線を残して欲しい」という地元民の要望に対し、「採算ガー」と突っぱねるJRに同調してた論者と構図は全く同じですよね。
散々叩いていた地元民と、規模は違えど、言ってる事は大差ないです。同じ穴のムジナってやつですかね。
私は、高速道路無料化に対し、諸手を挙げて賛同する事はしません。
生活にクルマを使う事が組み込まれた世界で生きているので、高速道路が渋滞するのはやはり鬱陶しいですし、事故で時間が読めなくなるのも、それはそれで困ります。
※特にバスなんかは影響が大きいと思われますし、それらの会社に対しては、運賃割引よりも、もっと直接的な支援の方が望ましいと思われます。行われるかどうかは不明ですが。
ただ、高速道路の大渋滞なんて、今に始まった事ではないですよね?
というか、長期休暇時には必ず直面する問題です。
長期休暇時は、公共交通機関にとっても書き入れ時なので、クルマが他の交通モードに比べ、割安である事に文句を言う人は多くありません。
しかし、長期休暇時以外はというと、特に鉄道なんかは露骨で、割安なきっぷはどんどん廃止され、ほぼ「定価」での移動を強いられるようになっています。
そこまで価格にこだわるなら、普段からもっと割引施策を充実させるべきだとは思うのですが、鉄道のおとくなきっぷの類は、条件が厳しくなったり効力が弱くなったり、あるいは存在が消えたり、という状態。
こんな有様で、高速道路を批判するのはおかしいでしょう。
結局、根底にある「クルマ憎し」の感情論、異常なまでの事業者寄りの意見から脱する事が出来ないまま、無理に公共交通機関を擁護しようとするため、言論に歪みが生まれているのです。
公共交通機関とクルマの諸問題については、今後こちらの記事シリーズにて記載しますので、良かったら見てください。